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頌春
 

 あけましておめでとうございます。本年も、よろしくお願い致します。

 ということで、恒例になっているような、いないような企画ですが、私の今年の年賀状に掲載した文を載せますね。

 犬は人に忠実だといわれる。しかしあまりに忠実な犬を見ると「大丈夫か?」と思う。自分を殺し過ぎていないか、いつか鬱憤が爆発しないかと心配になるのだ。

 わが家の「娘」アリーは、犬であるため、まあ忠実だ。「ダメ」の言葉に従うし、食べ物をもらう前(だけ)は、ちゃんとお座りもする。しかし忠犬とはほど遠く、猫のように気ままだ。散歩とおやつの時間以外は、何を言っても眠っているだけ。

 それでも、ときには自己主張をする。子供たちが必要以上に彼女をいじると、小さく「ウー」とうなる。また仕事場のドアを前足で叩いて、中に入れるように要求する。私はまるで、彼女のドアボーイになった気分だ。自己主張しすぎると嫌われるが、自己主張が少なすぎると、見ている方が心配になる。アリーは微妙なバランスが取れているように思える。

 大学1年、高校1年、小学5年の子供たちも、ときには口をとがらせて自己主張するが、場合によっては気味が悪いくらいに素直なこともある。時と場合、自分の考えや立場を鑑みて、その場その場に対応しているのだろう。反抗的な言葉に閉口し、腹を立てる私だが、数分後には「忠実すぎる犬のような『よい子』」でないことに安堵する自分に気づく。いつの間にか一人で、ニヤニヤしていたりするのである。

copyright : Masaru Inagaki(20060105)

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