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Mac &
New iBookがMacintosh Portableと重なる
稲垣 優

 2001年5月1日、AppleのNew iBookが発表された。日本時間では2日になっていたようだが。

 最近のAppleの例に漏れず、今回も発表と同時にWebサイトが切り替わったようで、この日からAppleもアップルも、サイトのトップページはiBookばかりになった。


 初代iBookが発売されたのは、1年半ほど前だったか。まるで貝殻のような筐体、ノッチのない蓋、持ち運びやすいハンドルと、どれもがセンセーショナルで話題になった。半面、古くからのマックユーザーの中には、その筐体が「コンシューマーにこびている」だの「変わった形で奇をてらっているだけ」などの辛辣な意見を出した人もいるとかいないとか…。概ね高い評価を受けていたが、体制を変化すれば、反対する人は絶対に出てくるわけで、それもまあ仕方のないことである。またデザインについては、全くもって個人の嗜好に左右されるわけだから、それを言い合うのは不毛というものではある。

 で、今回出たNew iBookでも、またいろいろな意見が出ているようだ。高く評価している声をよく聞くが「PowerBook G4の焼き直しじゃないか」という声も、ままあるようだ。

 PowerBook G4は、よく売れたらしい。斬新な筐体、それも1インチという薄さは驚愕に値する。よくこれまで薄くできたものだと思うが、噂ではあるがソニーが協力していると聞くと、なんとなく納得してしまうのだ。あのVAIO 505の薄さは、初めて見たときは感動ものだった。

 そんなPowerBook G4が「よく売れたから」同じような筐体のNew iBookを出したという声もある。まあこれはちょっと違うかなと(個人的に)思うわけだ。技術的なタイムラグについてはよく分からないが、PowerBook G4が売れてからNew iBookのデザインを決めたとは、とても思えない。言い換えれば、PowerBook G4を出した時点で、すでにNew iBookのデザインは固まっていたというのが本当のところではないだろうか。つまりAppleは、ノートマシンのデザインを一新し、さらにトータルなものにしていくことをずっと前に決定していたと思うわけで(真偽は分からないが)、単にPowerBook G4が先に出たからNew iBookが「焼き直し」に「見えるだけ」だとも思うわけである。

 正直に言うと、実は私は、PowerBook G4が出たとき「すごい」とは思ったが「めっちゃくちゃほしい」とは思わなかった。2000年2月に日本で発表されたPowerBook G3(Pismo)を翌月の3月に購入していたからかもしれない。Pismo購入から1年もたっていない身に、新たなPowerBookを買えるハズもない。だから「ほしい」と思わなかったのかもしれない。そう、4月末日までは、自分でもそう思っていた。

 しかし、である。New iBookが発表され、Web上での写真を見ただけで、なぜだか私は「めちゃくちゃほしい」と思ってしまった。なぜだろう?

 今でもPismoには満足している。PowerPC750(だと思うけど(^_^;)に満足しているし、ハードディスクもIBMの20GBに換えたお陰でアクセススピードが上がり、それまで引っかかる感じがしていたものがなくなっているから、さらに気に入っている。でもNew iBookを見たときは、スペックその他を度外視しても、ただアップルサイトのトップページで写真を見ただけで「ほしい」とマジで思った。なぜか。

 New iBook発表から10日がたとうとしている今、なんとなくその理由が分かりかけてきた。それは、New iBookが、「私にとってApple的だから」だと思うのだ。

 古い話で恐縮だが、1989年にMacintosh Portableというマックが発売された。当時の私はまだワープロくらいしか使っておらず、翌年になってはじめてマックをさわる訳だが、1991年の時点で、私はこのPortableの存在を知った。ポータブルの名前を持った最初のマックだ。もちろんPowerBookなどという言葉は、まだ存在していなかった(PowerBookシリーズの発表自体は1991年だったようだが)。それゆえ、私はMacintosh Portableを見て熱狂した。

「をを! ノートタイプのマックじゃん。これならどこへでも運べるじゃん」

 本当にそう思った。そしてめちゃくちゃほしくなった(まあ10kgという重さでどこまで運べるかは分からないが・笑)。

 ところが現実は甘くはなかった。価格は忘れたが、100万円は下らなかったと思う。当時、マックは安くなってきていたが、私が買ったIIciでも5MBのRAM搭載で50万円以上した。それと比べても、めちゃくちゃ高かった。だからもちろん買えなかったが、まさに羨望の的だったのである。

 なんでこんな古い話をするかというと、私の中で、なぜだかMacintosh PortableとNew iBookが重なっているようなのだ。同じように白い筐体だからか? いや、それだけではないはずだ。筐体のデザイン自体は、両者を比べても全く違う。Macintosh Portableは、90年代のワープロ専用機(ラップトップ)のように、モニタが筐体の中央あたりから起きあがるカタチで、もちろんカラー液晶ではない。両者が同じのは色の雰囲気だけ。なのに、なぜだか私のなかで重なっている(ことに最近気づいた)。

 Macintosh Portableを蓋が閉まった状態で見ると、スリットがたくさん入っている。これは空冷のためなのか、それとも単なるデザイン上の処理なのか分からないが、これと似たデザインがIIciなどの当時のマックにある。Quadora 700などもその系譜を踏んでいるわけで、当時のAppleらしさを出していたデザインといえるだろう。今でもこのころのデザインが一番好きだというユーザーもおり(反対に嫌いだという人もいるが・笑)、ある意味、伝説的なデザインになっているとも言える。

 しかしNew iBookには、そんなデザインはない。唯一、側面と背後にスリット状の部分があるが、ほんの一部であり、IIciやMacintosh Portableのスリットとは全く違った雰囲気である。

 まあ、結論から言うと、両者の共通性をいまだ見いだせないでいる。でも私の中では両者が重なるのだ。Appleというメーカーが、Appleの「色(白ということではない)」で出してきたマック。for rest of us(コンピュータの専門家以外の人のためのコンピュータ)というAppleのモットーが、もしかしたら両者に感じられるのかもしれない。

 事実、New iBookは、アメリカ、バージニア州ヘンリコ郡の公立学校へ、実に23,000台が供給されることになっているという。もちろんAppleの営業努力のたまものなのだろうが、Appleがそういう売り方をするということ自体、New iBookが本当に一般の人を対象にしたマシンだということがよく分かる。

 Mac Wire等のオンラインマガジンでは、New iBookがよく「万人に愛されるようなマシン」などと表現がされている。確かにそうで、スペック的には全く問題がなく(一般使用であれば)、その上、誰にでも愛され、飽きのこないデザインと言える。半面、それが気に入らないユーザーもいるだろう。マックといえば、PCとは違うのだ。マックはマックなのだという思いからすれば、確かに今回のNew iBookは「はずして」いると思う。iMacや先代のiBookの方が「マック魂を満足させてくれる」のかもしれない。しかし、根っからのマックっ子(笑)の私にして、「Appleらしい」と思わせたNew iBookは、単なる「万人受けを狙った、売るためのマシン」とは思えないのである。
 まあ、自分を過大評価するような言い方になったので、ちょっとまずいが(笑)、別に私がマックをよく知っているということではなく、マックをこよなく愛しているという意味だと思ってほしい。

 前述したように、New iBookとMacintosh Portableの類似性を、私は論理的に説明できない。しかし私の中で両者は重なっている。そしてどちらもが「めちゃくちゃほしい」と思えるマシンであることも一致している。それは、私にしてみれば論理を越えた部分での整合性であり、言ってみれば「におい」とでもいえるものだとも言える。

 初対面の人に対して、直感的に「この人とは、ちょっと合わないかも」と思うことがある。それを論理的に説明しろと言われると、まあそれなりに理屈を付けるわけだが、でもそれらが、「合わない」と思う理由のすべてとは言えない。さらには、そうした論理的な理由付けは、単に「取って付けたような」理由でしかないようにも思えるのである。

 何はともあれ、New iBook。ほしいものの、仕事用のマシンが必要になるため、たぶん買わないが、数年して中古が出たら、きっと買うだろう。それは、私がほしくてしょうがなかったSE/30を、その販売が終わって何年もがたってから中古で買ったのと同じように。

 みなさんは、どう思われますか?New iBook。

 「好き」「嫌い」「どうでもいい」「めっちゃ好き」「最低」「最高」…。いろんな評価ができると思うし、いろんな評価があって当然。でも私は、なんだか「めっちゃ好き」なんですね。う~ん、これって若き日の初恋みたい?(爆)


※Macintosh Portableを見たことがない人のために…。下のリンクからたどってください。ここまでMacintosh Portable好きの人がいたんだと、改めて驚愕です(^_^)。
まりもさま、リンクさせていただきました。ありがとうございます。

Portableの部屋(まりもの研究室)

copyright : Masaru Inagaki(2001.0509)

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